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東京地方裁判所 昭和39年(行ウ)115号 判決 1970年5月27日

東京都墨田区平川町三丁目五番地

原告

墨田金属化工株式会社

右代表者代表取締役

馬場宗光

右訴訟代理人弁護士

八坂甚六郎

東京都墨田区栄平一丁目七番二号

被告

本所税務署長

森本正一

右指定代理人

長谷川謙二

半田龍次

主文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第一当事者の申立て

(原告)

「被告が原告に対し昭和三八年一二月二五日付で昭和三七年四月一日から昭和三八年三月三一日までの事業年度の法人税についてした史正処分のうち所得金額一一一万四、〇六〇円、納付すべき税額二七万二、五七〇円を超える部分ならびに過少申告加算税および重加算税の賦課決定を取り消す。訴訟費用は被告の負担とする。」との判決

(被告)

主文と同旨の判決

第二原告の請求原因

原告が昭和三七年四月一日から昭和三八年三月三一日までの事業年度法人税につき所得金額三二万八、六六四円、納付すべき税額一〇万三五〇円と確定申告したところ、被告は、原告の東洋防熱工業株式会社に対する売掛債権四六万三、〇九〇円および手形債権一二五万五、四八五円の損金算入を否認し、昭和三八年一二月二五日付で、所得金額を二八三万二、六三五円、納付すべき税額を九六万六、五五〇円と更正し、過少申告加算税一万九、七〇〇円、重加算税一七万一、三〇〇円の各賦課決定をした(右更正および各賦課決定をあわせて以下本件処分という)。

しかし、前記東洋防熱に対する売掛債権および手形債権は、同社が昭和三七年二月一三日不渡手形を出して倒産し、資産のみるべきものもなく、全く回収不能の状態にあつたのであるから、貸倒金として損金に算入されるべきものであり、これを否認してなされた本件処分は、この限度において違法たるを免かれない。

第三被告の答弁

原告主張の請求原因事実中、東洋防熱が倒産したことおよび原告の同社に対する売掛債権および手形債権が係争事業年度において回収不能の状態にあつたことは否認するがその余の主張事実はすべて認める。

東洋防熱は、不渡手形を出してからも、そのまま営業を継続し、原告との間に相当額の取引があり、原告は、前記各債権につき、昭和三八年三月三〇日同社に対し内容証明郵便をもつて支払いの催告をなし、その後、同社が株式会社新潟鉄工所から受領した手形の裏書を受けてこれを回収している。したがつて、被告がこれらの債権の損金算入を否認したのは、正当であるというべきである。

第四証拠関係

(原告)

甲第一号証の一、二、第二号証の一ないし四第三、第四号証の各一ないし五、第五号証の一ないし八、第六号証の一ないし一一、第七、第八号証の各一ないし四、第九号証を提出し、証人聞部省作、井上哲男の各証言および原告代表者本人尋問の結果を援用し、乙第一、第二、第四ないし第六号証、第一〇号証の一ないし八の各イ、ロ、第一一号証の各成立を認め、乙第三号証の一ないし三七は原本の存在は認めるがその成立は否認する、その余の乙号各証の成立は不知。

(被告)

乙第一、第二号証、同第三号証の一ないし三七(但し、写しをもつて)、第四ないし第九号証、第一〇号証の一ないし八の各イ、ロ、第一一号証、第一二号証の一ないし三、第一三号証の一ないし一〇を提出し、証人田村兵馬、今村秀夫、林正治郎、石井透一の各証言を援用し、甲第一号証の一、二、第六ないし第八号証の各一の成立を認め、その余の甲号各証の成立は不知。

理由

原告が昭和三七年四月一日から昭和三八年三月三一日までの事業年度の法人税につき、東洋防熱工業株式会社に対する売掛債権四六万三、〇九〇円および手形債権一二五万五、四八五円を貸倒れとして損金に算入し、その主張のごとき確定申告をしたところ、被告が右損金算入を否認して本件処分をしたこと、東洋防熱が昭和三七年二月一三日不渡手形を出したことは、いずれも、当事者間に争いがない。しかして、原本の存在については原告の認めるところであり、その成立については証人今村秀夫の証言によつてこれを認める乙第三号証の一ないし三七、証人石井透一の証言によつて真正に成立したものと認める乙第一二号証の一ないし三および乙第一三号証の五ないし一〇並びに証人田村兵馬、今村秀夫、石井透一の各証言によれば、東洋防熱は、不渡手形を出してからも、その営業を継続し、原告に対しても工事代金等相当額の債権を有するにいたつたことを認めることができる。もつとも、証人間部省作および原告会社代表者馬場宗光は、右不渡手形後の取引は東洋防熱の代表取締役間部省作が個人としての資格でしたものであるように供述し、甲第三号証の一ないし四、甲第四号証の一ないし五五、甲第七号証の三にはこれにそう旨の記載はあるが、これらの供述、記載は、前掲各証拠に照らしてにわかに措信し難いばかりでなく、成立に争いのない乙第二、第四号証、証人井上哲男の証言によつて真正に成立したものと認める甲第九号証および右証人の証言によれば、東洋防熱は、間部省作の主宰する同族会社であつて、同人は今日にいたるまで同社の代表取締役を辞任した事実はなく、原告においても、同社に対して前記各債権を放棄又は免除したことなく、却つて、昭和三八年三月三〇日内容証明郵便をもつて同社に対し前記各債権の履行の催告をなし、また、前叙のごとくその損金算入が被告によつて否認されるや翌期において再びこれを貸倒金として損金に算入した事実が認められるので、該供述、記載をもつて右認定を覆えすに足る資料とはなしえず、また、右認定に反する甲第七号証の二、甲第八号証の二、四は、前掲各証拠に徴して措信し難く、他に右認定の妨げとなる証拠はない。したがつて、原告の東洋防熱に対する前記各債権が少なくとも係争事業年度において、回収不能の状態にあつたものということは許されない。

よつて、原告の請求は、その理由がないこと明らかであるから、これを棄却することとし、訴訟費用の負担につき行訴法七条、民訴法八九条を適用し、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 渡部吉隆 裁判官 園部逸夫 裁判官 渡辺昭)

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